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2022.07.14

育成を科学する。Enablement Project

育成を科学する。Enablement Project

 現在私は株式会社 AViC の人事責任者として、採用、人材開発、組織開発、制度・労務といった人事領域を管掌しています。入社前は上場企業や KDDIグループ、数千~数百名といった規模の企業で20年間、人事領域を中心に従事してまいりました。
本稿では当社の人材育成に関する取り組みをご紹介しつつ、デジタルマーケティング業界に限らず、人材育成に携わる多くのビジネスパーソンにとってヒントとなる情報を提供できればと思います。

プロフィール:加藤 仁規(かとう まさのり)

2001年大学卒業後、コネクシオ入社。顧客対応からキャリアをスタートし、新卒採用の立ち上げ、制度設計・運用、労務対応など人事領域全般に従事。2014年にmediba入社。7年人事部長を務め、組織エンゲージメント、人事制度改革をリード。2022年からAViCに入社し人事部長として活動。 東京都新宿区生まれ。
MyMissionは、公私ともに出会ったヒトの人生を豊かにすること。

スタートアップベンチャーが取り組む人材育成

株式会社 AViC は2018年に創業し、社員数は現在約50名のスタートアップベンチャー企業です。次代を担う企業の事業成長をマーケティングの力で加速させたい、という想いのもとデジタルマーケティング支援事業を展開しています。インターネット広告や SEO コンサルティングを中心としたデジタルマーケティングのサービスを通して、クライアントのマーケティング課題の解決を目指しています。

私たちが目指す社会を実現するためには、より多くのクライアントに価値あるサービスを提供していかなければならず、当社の組織をスケールさせて筋肉質な体制を作っていくことが必要です。組織をスケールさせるための手段として、たとえば中途採用を行うなど、人材不足を外部調達で解決することが考えられますが、専門人材という限られたパイを奪い合う採用競争に勝ち続けなければならず、戦略上サスティナブルではありません。

未経験人材であってもスキルを効率的に習得する仕組みがあれば、将来にわたって外部環境の影響を受けずに組織を拡大できるようになります。その仕組みには自社ならではの育成課題を反映させることが必要になるため、他社からの模倣は難しく、差別化された強みとなります。つまり、内部で専門人材を育成できる仕組みを作ることは、質を維持・向上しながら組織をスケールするためのサスティナブルなソリューションと言えます。

独自の人材育成プログラム「イネーブルメントプロジェクト」

現在、当社の組織は40% が新卒で入社した社員で構成され、一番年次が高い新卒入社の社員でも入社3年目といった比較的フレッシュな会社です。新卒採用は創業2年目の2019年からスタートし、採用計画数は増加傾向です。新卒・未経験で入社した彼らは、クライアントに提案できるレベルにまで早期に成長し、今では戦力の中心となっています。スピーディな育成ができた大きな要因には、デジタルマーケティング業界で活躍してきた経営幹部から直接 OJT を受けられたことが挙げられます。

人数が少ないうちは、こうした育成手法でも問題ありません。しかしながら、今後組織を100名、200名と拡大させていく過程では、経営幹部がいつまでも直接 OJT をすることは物理的に難しくなっていきます。当社においても、組織が成長していく中で、将来起こる課題に対し先回りし、事業成果を生み出せる人材を育成する仕組みが必要になりました。こうした背景もあり、育成プログラムとしての「イネーブルメントプロジェクト」が2021年にスタートしました。

株式会社 AViC が実践している「イネーブルメントプロジェクト」の概要

図表 1 株式会社 AViC が実践している「イネーブルメントプロジェクト」の概要

「イネーブルメントプロジェクト」とは、人材育成において属人的・感覚的ではなく、科学的なアプローチをすることで、確実かつスピーディに人材が育つ環境や仕組みを確立していくための取り組みです。イネーブルメントという名称には、当社費用のうち P/L の過半以上を占める人件費を有効化(イネーブルメント)するという意味が込められています。具体的には図表1ならびに下記の(1)→(2)→(3)→(2)→(1)のサイクルを繰り返すことで、育成の精度を上げ続けています。

株式会社 AViC が実践している「イネーブルメントプロジェクト」のサイクル


(1)状態や行動を項目化・言語化
トッププレイヤーの行動特性(具体的行動や状態)を言語化していき、項目に分類する。

(2)各メンバーを項目毎に採点
育成対象社員の業務遂行時の行動や状態を、(1)で分類した項目ごとに採点。採点結果とトッププレイヤーとの点数ギャップのある項目を認識する。

(3)ギャップが大きい項目に対し、仕組みとして育成施策を打つ

(2)(改めて)各メンバーを項目毎に採点改めて採点を実施して、ギャップにどのような変化があったのか確認し、育成施策の効果検証を行う。

(1)(改めて)状態や行動を項目化・言語化行動特性の言語化や分類した育成項目が高い成果を上げるという目的にヒットしていたかを検証し、チューニングを行う。

それぞれの段階でやるべきことついて、もう少し詳しく解説します。

組織的な仕組みとしての育成施策

(1)状態や行動を項目化・言語化

行動特性の言語化、育成項目の分類をしていく手順として、まず高いパフォーマンスを上げているトッププレイヤーにヒアリングを行います。ヒアリングの中で見えてくる行動特性や状態を図表2のように言語化し分類していきます。

ヒアリングで見えてきたキーとなる行動特性の一例

図表 2 ヒアリングで見えてきたキーとなる行動特性の一例

大カテゴリには、コンサルティングスキルや営業スキルといったベーシックスキルが入ります。小カテゴリには大カテゴリのスキルを構成する要素に分解した項目、KDI はさらに行動レベルまで落とした項目が入ります。KDI は Key Doing Indicator の略で、KPI の達成に向けて戦略的、組織的な行動に落とし込むための重要指標です。KPI の下位指標というとイメージがしやすいかもしれません。

図表2では大カテゴリ、小カテゴリ、KDI という項目まで表示していますが、実際は KDI をさらに明確に定義し、採点できるレベルまで解像度高く言語化していきます。

(2)各メンバーを項目毎に採点

(1)で言語化された項目ごとに育成対象者の採点をしていきます。採点をしていくとトッププレイヤーと育成対象者との点数ギャップが見えてきます。組織全体でみた場合は、ギャップは1ヵ所だけでなく複数出てきますので、どの項目を重点的に取り組む KDI とするかを決めます。その後の育成施策検討のベースになるので、KDI の決定はとても重要な作業です。

(3 )ギャップが大きい項目に対し、仕組みとして育成施策を打つ

(3)では、(2)で設定した KDI に対して、仕組みとしての育成施策を打っていきます。

以降は、(3)→(2)→(1)→(2)→(3)→(2)……とサイクルを繰り返すことで、様々な育成施策を積み重ねていき、育成の精度を上げ続けていきます。

(3)の育成施策の事例で挙げたテンプレートやリストを作るだけでは、課題の解決にはつながりません。このようなツールを作ってみたけれど KDI に変化がない、という場合は、なぜ効果が出ないのかを深掘りしていく必要があります。上記のサイクルを繰り返すことで、トライした育成施策がきちんと効果を出せているのかを検証することも、サイクルの中に組み込まれています。

組織的に育成に取り組む中で生まれた「個の動き」

「イネーブルメントプロジェクト」のキーは、複数ある KDI の中から組織として重点的に取り組むべき指標を特定し、育成施策を打つことにありますが、トッププレイヤーとのスキルのギャップが見える化されたことで、個々の社員が具体的にどの領域を伸ばし、補っていくかが明確になる効果もありました。

例をあげると、上司やトレーナーと育成対象者の間で、育成するべき領域について共通認識を持つことができるので、結果として、日々の育成における認識のズレが起きなくなりました。また、育成対象者の中にはトッププレイヤーとのギャップが明確に存在することをしっかり受け入れて、自分に足りない領域については、トッププレイヤーの仕事の進め方や資料フレームを積極的に真似てみたり、足りない知識を補うために資格の取得を目指したりなど、自身を成長させようとする自発的な動きが出てくるようになりました。もともとは組織として KDI にヒットする育成施策に取り組むことをメインにした動きではありましたが、一人ひとりの社員が成長に向けて自走し始めたことは、想定外の嬉しい副産物でした。

組織が質的にも量的にも成長していくフェーズにおいて、マネジメントに求められるミッションも増加していきます。マネジメントの中でも特に人材育成の領域は、重要度は高いと認識しながら、効果が明確に表れにくいため、優先度は低くなりがちです。ここに対してマネージャーの属人的なスキルに依存することなく、仕組みとして組織的に取り組めたことで、人材育成の領域において将来発生するマネジメントコストを減らすことができたと考えています。

仕組みで世の中の課題解決に挑む

「イネーブルメントプロジェクト」は、事業成果にヒットする人材の有効化(イネーブル)を目的としてスタートしました。当社は現在、ここまでに紹介したサイクルを数ターン回したところです。今後も継続していくことで、取り組んだ育成施策は財産として残り、人が育つ環境は年を重ねるごとに充実していくことでしょう。その結果として、効率的に人材のイネーブルメント(有効化)が実現され、KPI・KGI を達成できる人や組織を創っていけると信じています。

「イネーブルメントプロジェクト」は、人材育成の課題を仕組みで解決に導くという点でチャレンジングな取り組みでした。人材領域以外でも、今回のように様々な課題を仕組みによって解決することができれば、特定のリソースに依存せず価値を生み出すことができるようになり、サスティナブルな成長が実現できると考えています。

当社は、「マーケティングで人・企業・社会をより良くする」というミッションを掲げ、マーケティングにおけるデジタルデバイドのない世界を目指しています。仕組みで課題を解決していくことで、私たちが今生きている世界よりも、未来を少しでも善くしていけたらと考えています。

株式会社AViCにご興味を持っていただいた方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。事業内容やミッション等について紹介しています。

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